淡山翁記念報徳図書館
- 文化・教育施設
静岡県掛川市、大日本報徳社の聖地に静かに佇む「淡山翁記念報徳図書館」。この歴史的建造物は、遠江国報徳社(後の大日本報徳社)の二代目社長・岡田良一郎(号・淡山)の十三回忌を期して、その遺徳を記念し1927年に建設されました。建設資金は、当時の副社長・佐々井信太郎の呼びかけにより、社員らが資金を出し合う「推譲(すいじょう)」の精神によって集められたものです。
建築史的な価値も極めて高く、県内に現存する鉄筋コンクリート造の民間図書館としては最古のものです。外観はアール・デコ様式の影響を感じさせるモダンなデザインで、過剰な装飾を控えたタイル張りの姿には、質実さを重んじる報徳の気風が漂います。
1928年の開館後、戦後の1952年から1969年にかけては「掛川市立図書館」として市の運営に供されました,。民間施設が行政の図書館機能を担ったこの事実は、現代の「公民連携」を先取りする画期的な取り組みであり、地域教育への多大な貢献を示しています。現在は再び同社の管理下で専門図書館として機能し、2001年には静岡県の有形文化財に指定されました。
時代の荒波を越え、貴重な建築と精神を今に守り伝える運営管理主の皆様には、深く敬意が表されます。歴史と建築を愛する皆様、掛川城と共に、この明治・大正・昭和の志を伝える学びの場へ、ぜひ足を運んでみてください。
(2025年12月執筆)







