旧マッケンジー住宅
- 文化・教育施設
旧マッケンジー住宅は、静岡市駿河区高松の海岸沿いに佇むスパニッシュスタイルの洋館として知られています。1940年に竣工し、日本茶の輸出に尽力したダンカン・J・マッケンジーと、静岡市初の名誉市民となった社会福祉家エミリー・M・マッケンジー夫妻の旧宅です。当時は夫妻が永住の地として静岡を選び、現地の人々との交流を深めながら暮らしました。設計は著名な建築家ウィリアム・M・ヴォーリズによるもので、赤い洋瓦と白壁、アーチ型の窓を特徴とし、富士山を望む窓や、自然光を取り込む設計が施されています。
戦後、夫妻が帰国した1947年以降、この建物は国有化され、一時は住友金属の幹部住宅としても利用されました。やがて敷地の一部が静岡市に寄贈され、その後建物も市が取得し、戦前建築の貴重な文化遺産として保存・公開されることになります。
旧マッケンジー住宅は1997年に国の登録有形文化財に指定されたほか、2011年には静岡市地域景観資源にも登録されるなど、公的な文化的価値が広く認められています。こうした歴史とともに、市や文化振興財団によって維持・保存活動が続けられ、一般にも公開されてきました。住宅の内部には現代にも通じる設備や意匠が残り、当時の生活や交流の様子を現代に伝えています。
この歴史的な建物を未来に残すべく尽力される関係者様に敬意が表されます。静岡の歴史と文化の生き証人である旧マッケンジー住宅を、ぜひ現地で体感してみてはいかがでしょうか。
(2025年7月執筆)
PHOTO:PIXTA