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ドクターイエロー 引退

  • 乗り物

黄色い車体が守った25年 ― ドクターイエロー、検測の記録

2001年(平成13年)9月、JR東海所属の新幹線電気軌道総合試験車923形0番代「T4編成」が本格運用を開始しました。「線路のお医者さん」として親しまれたこの車両は、約10日に1度、東海道・山陽新幹線(東京駅〜博多駅間)の全線にわたって、実際の営業用路線を疾走しながら電気設備や軌道設備などの精密検測を続けています。2005年(平成17年)にはJR西日本所属の「T5編成」が登場し、T4編成と交互に運行することで検測網を完成させました。


自動化が変えた検測の姿

従来の架線検査は、作業員が夜間に線路内へ立ち入り、沿線約40万個の「ハンガ」と呼ばれる金具を徒歩で目視点検する労働に支えられていました。2023年(令和5年)12月12日、JR東海は時速300キロメートルで走行しながら検査できる「架線三次元検測装置」と「電車線金具異常検知装置」を開発しました。前者はラインセンサカメラと測域センサを組み合わせ、架線交差部の位置関係を立体的に判定し、後者は近赤外線照明とAIにより金具の異常を自動検出します。取得データは2027年(令和9年)に本格運用予定の「ミリ波方式列車無線」で地上へ伝送される計画です。2025年(令和7年)10月16日には、床下のレーザ光を使わず台車の角度センサと変位センサのみで軌道形状を測定する新技術も発表され、営業車両による検測代替が現実のものとなりました。


引退へのロードマップ

T4編成は老朽化により2025年(令和7年)1月にすべての検測走行を終了しました。T5編成は約21年の活躍を経て2027年(令和9年)1月に検測運転を終了します。同じく山陽区間を走った500系新幹線も、2027年1月13日に定期運転を終え、同年7月に完全に運転を終了する予定です。


「ドクターS」への継承

ドクターイエローの検測機能は、2027年(令和9年)1月から本格導入される営業用N700S車両「ドクターS」に引き継がれます。2026年(令和8年)4月20日に発表されたこの名称は、N700Sブランドの「S」を継承し、ロゴのSを黄色く表現したものです。ドクターSは4編成(各16両)が投入され、同年10月から走行試験を開始します。引退したT4編成の車体から回収したアルミ部材は、水平リサイクル技術によりドクターSの車体の一部に再利用される予定です。

(2026年9月執筆)

この車両に遭遇するチャンスは稀であり、その時は「なにか良いことが起こる前触れ」とされるほど縁起の良い車両とのことです。

 

ドクターイエロー。日本の鉄道史に深く刻まれる存在と言えそうです。

PHOTO:写真AC

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