【常磐線】勿来駅舎 解体取壊
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勿来駅は、福島県いわき市の最南端に位置する常磐線の主要駅として、長い歴史を刻んできました。開業は1897年で、当初は「窪田駅」となる予定でしたが、地域の象徴である「勿来関」にちなんで「勿来駅」と命名されました。駅の設置場所は、江戸時代に宿場町として賑わった関田地区の西側で、開業当初は周囲に水田が広がるのどかな地域でした。
20世紀初頭には、石炭産業の発展に伴い貨物輸送が盛んとなり、駅の役割は大きく拡大します。1906年には国有化され、1909年には常磐線の一駅として正式に編入されました。その後、貨物取扱量は水戸鉄道管理局内でも上位に位置し、昭和30年代には貨物・旅客ともに賑わいを見せました。
駅舎は時代とともに改築・移設が繰り返され、1939年には現在の駅舎が建設されました。戦後は高度経済成長の波に乗り、準急・急行・特急の停車や、夏場の海水浴客で活気づきました。しかし自家用車やバスの普及により、利用者数は徐々に減少し、2003年には貨物列車の運行も終了しています。近年では、ICカード「Suica」導入や駅舎のリニューアルなど、利便性向上の取り組みも行われてきました。そして2025年6月2日から、築80年以上となる現駅舎の老朽化を受けて建て替え工事が始まります。新駅舎は木造平屋建てで、温もりある待合室を備え、2026年冬ごろの供用開始が予定されています。
勿来駅は、地元住民の通勤・通学や地域観光の玄関口として、今も重要な役割を担い続けています。長年にわたり運営を続けてきたJR東日本様の尽力に敬意を表します。そして、かつての賑わいや旅の思い出を胸に、ファンの皆さまには新たな駅舎とともに、これからも勿来駅への愛着を深めていただきたいと思います。
(2025年5月執筆)
PHOTO:写真AC