【クルーズ船】にっぽん丸 退役
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「にっぽん丸」は、日本のクルーズ文化をけん引してきた象徴的な客船です。その歴史は1970年代初頭、南米航路に就航していた「あるぜんちな丸」(2代目)がクルーズ専用船として生まれ変わり、「にっぽん丸」と名を改めたことに始まります。初代にっぽん丸は日本船として初めて世界一周クルーズを実現し、国内のレジャークルーズの草分け的存在となりました。
その後、時代の流れとともに2代目、3代目と船体が受け継がれ、現在運航されている3代目にっぽん丸は1990年代に進水しました。記念すべきデビューの際には皇室関係者が支綱切断を行い、華やかな船出となりました。就航後は国内外の多くの港を巡り、数多くのクルーズを実施し、多くの乗客に船旅の魅力を届けてきました。航行した距離も膨大で、長い年月をかけて世界中を巡ってきたことがうかがえます。
にっぽん丸は「美食の船」としても評判が高く、寄港地の旬の食材を活かした料理や、地域と連携したイベントを大切にしてきました。小回りの利く船体を活かし、大型船では立ち寄れない離島や小さな港にも積極的に寄港し、地域との絆を深めてきたことも特徴です。また、国の青年交流事業などにも活用され、日本を代表するクルーズ船としての地位を確立しています。
しかし、船齢の上昇や新しい船の導入計画を受け、現行のにっぽん丸は2026年春に横浜に帰港するクルーズを最後に引退することが決定しました。引退に際しては、思い出深い港での特別なディナーやファイナルイベントが予定されており、長年愛された船旅のフィナーレを彩ります。今後は新造船へとバトンが引き継がれ、にっぽん丸の伝統が受け継がれていく予定です。商船三井クルーズ株式会社様の長年にわたる運航と、心温まるおもてなしに深く敬意を表します。そして、にっぽん丸での旅を経験したすべての方々が、それぞれの思い出を胸に、船旅の記憶を振り返っていただければ幸いです。
(2025年6月執筆)
堂々たる歴史のファイナルラップに入りました。
PHOTO:写真AC