甚左衛門堰
- 文化・教育施設
草加市の札場河岸公園に、明治時代の面影を今に伝える煉瓦造りの水門「甚左衛門堰」があります。その起源は江戸時代、有力者であった野口甚左衛門家が設けた木造の堰にあります。綾瀬川の洪水を防ぐ治水と、水田へのかんがい用水を確保する利水の役割を担っていました。
1890年の大水害を機に改築され、1894年に現在の美しい二連アーチ型の煉瓦造水門が完成しました。これは明治期における地域の近代化を象徴する建造物です。完成から1983年までの約90年間、地域の暮らしと農業を支え続けましたが、新たな排水機場の完成に伴いその役目を終えました。
現在は建設当初の姿を良好に保つ貴重な歴史遺産として高く評価され、1998年に草加市、翌1999年には埼玉県の有形文化財に指定されています。その姿は、日本の農業土木や窯業の技術史においても重要な価値を持ちます。この貴重な歴史遺産を未来へと守り伝えてきた草加市、そして埼玉県の関係者の皆様の尽力に、深く敬意が表されます。
ぜひ一度、札場河岸公園を訪れ、時代を超えて草加の街を見守り続ける煉瓦造りの堰の姿に、直接触れてみてはいかがでしょうか。
(2025年7月執筆)
PHOTO:PIXTA