岐阜公園三重塔
- 文化・教育施設
岐阜公園三重塔の歴史的史実と歴史的価値岐阜公園三重塔は、大正天皇の即位を祝う記念事業として、市民からの寄付により1917年11月に岐阜市が建立しました 。この塔の建立には、国家的な慶事を祝うと共に、五穀豊穣や市内の繁栄といった地域住民の切なる願いも込められていたとされます 。設計は、日本建築史学の創始者とも称される建築家、伊東忠太氏が担当しました 。また、風光明媚な現在の場所の選定には、日本画家の川合玉堂氏が風水を考慮して関わったと言われています。
塔の構造的特徴として、中央の心柱を鎖で吊り下げて地面から浮かせる「懸垂式工法」という、現存する文化財指定の三重塔では唯一とされる珍しい技術が採用されています。さらに、1915年まで長良川に架かっていた旧長良橋の木製トラス橋の古材が塔の部材として再利用されており、地域の歴史を繋ぐ試みも見られます。その歴史的および建築的価値から、三重塔は2005年に「金華山の西麓にあって広く市民に親しまれている」として、国の登録有形文化財に登録されました。
建立から約100年が経過し老朽化が進んだため、2014年9月から2017年2月までの約2年半にわたり大規模な修復工事が実施され、創建当初の壮麗な姿が見事に復元されました。この岐阜のシンボルとも言える三重塔を大切に守り、未来へと継承していく岐阜市ならびに保存に関わる全ての方々の真摯なご尽力と、この地が長年にわたり育んできた豊かな文化遺産に対し、深く敬意を表します。
(2025年5月執筆)
PHOTO:写真AC