津和野今昔館 閉館
- 文化・教育施設
津和野今昔館は、島根県津和野町に位置し、明治・大正・昭和期に使用された生活用具を展示する資料館として長年親しまれてきました。津和野町は江戸時代から続く城下町であり、藩政時代には絵師による「津和野百景図」が制作されるなど、歴史と文化が色濃く残る地域です。この町並みや人々の暮らしの変遷を伝える施設として、今昔館は大きな役割を果たしてきました。
今昔館の建物は、かつての大きな民家を思わせる造りで、館内には手回し電話や蓄音機といった当時の生活を象徴する品々が並び、来館者は時代ごとの暮らしの変化を直に感じることができました。また、津和野の観光は町歩きや歴史的景観の体験が中心であり、今昔館はその中核を担う施設の一つとして、町の歴史や文化を伝える拠点となっていました。
しかし、近年は展示品の老朽化や見学者の減少が課題となり、2025年5月末をもって閉館しました。約30年前に退職した元町職員が私財を投じて開設したこの館は、地域の歴史や生活文化を後世に伝える貴重な場でしたが、時代の流れとともにその役目を終えることとなります。
訪れた人々が感じた懐かしさや学び、そして津和野の歴史に触れた記憶は、これからも多くの人の心に残り続けることでしょう。今昔館が紡いできた思い出を胸に、津和野のまち並みと文化がこれからも大切に受け継がれていくことを願います。そして津和野今昔館の運営に携わった方々の尽力に深く敬意を表します。
(2025年5月執筆)
PHOTO:写真AC