河津バガテル公園 閉園
- 文化・教育施設
誇り高きフランスの美意識が根付いた「伊豆のバガテル」
平成13年(2001)4月28日、静岡県河津町の標高100メートルに位置する春ノ蔵台地に、総事業費約22億円を投じて「河津バガテル公園」は誕生しました。この地は、フランス・パリにある本家バガテル公園の、世界で唯一の姉妹園として整備された特別な場所です。18世紀フランスの精神「アール・ドゥ・ヴィーヴル(人生を謳歌する術)」を具現化するため、パリ市から専門家が招かれ、日本の庭師と共に泥にまみれながら、幾世紀も続く美学をこの土壌に根付かせました。海風が吹き抜ける3ヘクタールの園内には、計算し尽くされた幾何学模様のフランス式庭園が広がり、約1100品種、6000株ものバラが咲き誇る、まさに「東洋のパリ」と呼ぶにふさわしい光景が創出されたのです。
地域に彩りを添えた「花ごよみ」と交流の記憶
公園は、河津桜や花菖蒲に続く「第三の花」として、地域に一年を通じた彩りをもたらしました。園内にはパリの「皇后のキオスク」や、プチトリアノンを模した建物群が並び、訪れる人々を異国の街角へと誘いました。平成18年(2006)には累計入園者数が100万人を突破し、伊豆急行線では華やかなラッピング車両「トランバガテル」が運行されるなど、町は大きな活気に包まれました。町民には施設利用券が配られ、日常の散策コースとして親しまれたこの場所は、単なる観光地を超え、人々の笑顔とバラの香りが交差する、かけがえのない交流の拠点となっていたのです。
時代の荒波と25年目の大きな転換点
華やかな歴史を刻んできた公園ですが、時代の変化とともに経営環境は厳しさを増していきました。平成27年(2015)3月には運営会社の解散により町直営となり、令和5年(2023)4月からは指定管理者制度を導入して再起を図りました。ドッグランの設置など新たな試みも行われましたが、赤字経営の解消には至りませんでした。そして令和8年(2026)2月24日、大川良樹町長は定例記者会見にて、令和8年(2026)3月末をもって有料営業を終了する方針を正式に発表しました。25年にわたり愛された名園は、今、大きな曲がり角を迎えています。
薫り高き記憶を未来へ繋ぐために
令和8年(2026)4月以降、施設は無料の町営公園として開放されますが、長年維持されてきた緻密なローズガーデンの管理は、同年9月末をもって終了する見込みです。日仏両国の情熱が結実した奇跡の庭園が、その役割を静かに終えようとしている事実に、多くの惜しむ声が寄せられています。これまで庭園を守り続けてきた関係者の皆様の献身に深い敬意を表するとともに、たとえ形を変えたとしても、この地で育まれたバラの香りと優雅な記憶が、訪れた人々の心の中で永遠に咲き続けることを願って止みません。
(2026年2月執筆)
PHOTO:写真AC







