旧大津公会堂
- 文化・教育施設
琵琶湖のほとり、浜大津の地に優雅に佇む「旧大津公会堂」。その歴史は1934年、昭和天皇の即位を記念する事業の一環として、市民の寄付により建設されたことに始まります。鉄筋コンクリート造りのモダンな洋館は、誕生の瞬間から大津の新たなシンボルとなりました。
当初は公会堂のほか、大津商工会議所や市立図書館を併設した複合施設として、地域の文化と経済の中心的な役割を担いました。戦後間もない1946年には、全国に先駆けて公民館となり、県立図書館が移設されるなど、市民の学びと交流の拠点として再出発します。その後も時代に応じて、市民センターや急病診療所、社会教育会館とその役割を変えながら、常に市民の暮らしに寄り添い続けてきました。
しかし、長年の利用により建物の老朽化が進み、耐震性の問題などから一時は取り壊しも検討されました。この危機に立ち上がったのが、建物の保存を願う市民の声でした。熱心な保存運動が実を結び、建物は解体を免れ、2009年に大規模な改修工事が行われます。そして2010年、レストランや貸しホールを備えた新たな交流施設として再生を果たしました。
その歴史的価値は高く評価され、国の登録有形文化財、そして大津市の景観重要建造物にも指定されています。昭和、平成、令和と、時代の変遷を見守りながら、大津の街と共に歩んできた旧大津公会堂。その90年にわたる歩みと、建物を守り続けてきた人々の想いに、心からの敬意を表します。
(2025年9月執筆)
PHOTO:写真AC