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旧醒井郵便局局舎

  • 文化・教育施設

滋賀県米原市、中山道の宿場町として栄えた醒井宿に、ひときわ目を引く洋風建築があります。旧醒井郵便局局舎として知られるこの建物は、1世紀以上にわたり地域の変遷を見守り続けてきました。

醒井宿における郵便事業の歴史は1872年に遡りますが、一度廃止されるなど変遷を経た後、現在の局舎の礎となる郵便局が1901年に改めて設置されました。そして1915年、米国出身の建築家ウィリアム・メレル・ヴォーリズの設計により、木造2階建てのモダンな局舎が誕生します。当時、伝統的な日本の町並みが広がる中に現れたネオクラシシズム様式の建物は、新しい時代の到来を告げる象徴的な存在でした。1934年には外壁がモルタル張りへと改修され、より重厚で堅牢な印象を与えました。この局舎は、単に手紙を扱う場所ではありませんでした。1階は郵便・電信窓口、2階は電話交換室と交換手の宿直室を兼ね備え、まさに地域社会の情報通信を担う中心拠点でした。住民にとって、遠方の家族との繋がり、事業の連絡、緊急時の通信手段など、日々の暮らしに不可欠な存在として深く根付いていたのです。

しかし、時代の流れとともにその役割にも変化が訪れます。建物の老朽化や業務の拡大に対応するため、郵便局としての機能は1973年8月19日をもって新しい局舎へ移転され、58年間にわたる現役の歴史に幕を下ろしました。これは、地域に愛された一つの時代の終わりを意味する出来事でした。

その後、歴史的・建築的価値が再評価され、建物は保存されることになります。そして2000年、米原市醒井宿資料館として新たな命を吹き込まれました。現在は国の登録有形文化財として、かつての郵便局時代の資料や、江戸時代に宿場の庄屋を務めた家系の古文書などを展示し、醒井宿の豊かな歴史を後世に伝えています。

この建物の保存と活用に尽力されてきた関係者の皆様に深く敬意を表します。局舎が刻んできた長い歴史は、訪れる人々に、ここで交わされたであろう数多の便りや人々の想いを静かに語りかけ、懐かしい記憶を呼び起こさせてくれることでしょう。

(2025年9月執筆)

PHOTO:写真AC

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