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会津さざえ堂

  • 文化・教育施設

福島県会津若松市、白虎隊終焉の地として知られる飯盛山に、世界でも他に例を見ないユニークな仏堂が佇んでいます。通称「会津さざえ堂」、正式名称を「円通三匝堂」といい、その歴史は江戸時代後期の1796年にまで遡ります。このお堂は、当時飯盛山にあった正宗寺の住職、郁堂和尚の発案によって建立されました。遠く離れた西国三十三観音霊場への巡礼が困難であった庶民のために、このお堂を参拝するだけで巡礼と同じ功徳が得られるようにという願いが込められていました。

さざえ堂の最大の特徴は、木造の二重螺旋構造にあります。内部は階段ではなく緩やかなスロープが続き、上りと下りの通路が交わらない一方通行の設計になっています。これにより、多くの参拝者がすれ違うことなく安全に巡ることができました。この独創性と合理性を両立させた構造は、日本の建築史上でも極めて特異な存在です。

明治時代に入ると神仏分離の影響を受けましたが、その建築物としての価値は揺らぐことなく、後世に受け継がれました。そして1996年、その歴史的・文化的な価値が認められ、「旧正宗寺三匝堂」として国の重要文化財に指定されました。

会津さざえ堂は、江戸時代の庶民信仰の篤さと、それを形にした会津の工匠たちの卓越した技術力を今に伝える貴重な文化遺産です。会津の地にとって、歴史と信仰、そして独創性の象徴として、今も静かに人々を迎え入れています。二百有余年もの間、この類まれな建築を守り伝えてこられた関係者の皆様には、深く敬意が表されます。歴史を愛する方であれば、ぜひ一度この地を訪れ、先人たちの知恵と祈りが作り出した不思議な空間を体感してみてはいかがでしょうか。

(2025年11月執筆)

PHOTO:PIXTA

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