すさみ町立上戸川小学校 閉校
- 文化・教育施設
和歌山県すさみ町の山あい、周参見川のほとりに佇む木造校舎。ここは、かつて地域の子どもたちの声に満ちあふれていた上戸川小学校の跡地です。
1879年、近代日本の夜明けと共に創立されたこの学び舎は、92年間にわたり地域の中心であり続けました。周囲の暮らしは、豊かな森がもたらす林業と深く結びついていました。伐採された木材は筏に組まれ、屈強な筏師たちの手で川を下り、町の経済を支えました。子どもたちは、そんな親たちの背中を見ながら、1932年に建てられた温かみのある木造校舎で学びました。
戦後の復興期には、木材需要の増加とともに地域は活気づき、教室は多くの子どもたちで賑わいました。しかし、1960年代の高度経済成長は、道路網の発達とトラック輸送への転換を促し、地域の基幹産業であった筏流しを過去のものとしました。仕事を失った若い世代は村を去り、児童数は激減。1971年、上戸川小学校は惜しまれつつその歴史に幕を下ろしました。
閉校後、校舎は都市との交流施設や自然体験学校として再利用され、新たな役割を担いましたが、現在は静かな時を過ごしています。この学び舎の歴史は、時代の変化の中で懸命に生きた人々の営みの証です。その運営に尽力されたすべての方々に深い敬意を表します。卒業生や先生方にとって、この校舎は今もなお、かけがえのない思い出が詰まった心の故郷であり続けることでしょう。
(2024年8月執筆)
当校の歴史と伝統は永遠に語り継がれることでしょう。
長年に渡り地域の子供達の登下校を見守り続けました。
PHOTO: 廃校5000 様