串本町立須江小学校 閉校
- 文化・教育施設
黒潮寄せる本州最南端の島、紀伊大島。その南側に位置する漁業の町、須江地区に、かつて地域の子どもたちの成長を見守り続けた学び舎、串本町立須江小学校がありました。
正確な創立年は定かではありませんが、明治時代の近代化の波の中で誕生したとみられます。創立から間もない1890年には、沖合でトルコ軍艦エルトゥールル号が遭難する悲劇が起こりました 。島民による献身的な救助活動は、日本とトルコの友好の礎として今に語り継がれており、当時の子どもたちの心にも深く刻まれたことでしょう。
学校は、250年以上の歴史を持つ伝統芸能「須江の獅子舞」に代表される、豊かな地域文化と共に歩みました 。運動会や学芸会は地域住民が一体となる一大行事であり、学び舎はまさにコミュニティの中心でした。1958年(昭和33年)には大島村が串本町と合併し、学校も新たな時代を迎えました 。 しかし、少子化という時代の流れには抗えず、1998年3月、地域住民に惜しまれながら大島小学校へと統合され、その長い歴史に幕を下ろしました 。
ですが、学び舎の灯は消えませんでした。閉校後、校舎は「須江ダイビングセンター」として再生され、国内外から訪れるダイバーたちの交流拠点として新たな賑わいを見せています 。かつて子どもたちの声が響いた教室は、海の冒険を語り合う楽しげな声が満ちる休憩室へと姿を変えました 。 長年にわたり地域の教育を支えてこられた串本町、そして歴代の教職員の皆様のご尽力に深く敬意を表します。この学び舎を巣立った卒業生の皆様、そして教鞭をとられた先生方にとって、校舎は姿を変えても、ここで育まれた友情や学びの日々は、今もなお心の中で輝き続けていることでしょう。
(2024年9月執筆)
長年に渡り、地域の子供達をお守り頂きありがとうございます。
PHOTO: 廃校5000 様