熊野川町立敷屋小学校 閉校
- 文化・教育施設
和歌山県新宮市熊野川町、熊野川のほとりに佇む旧敷屋小学校は、地域の歴史と共に歩んだ学び舎です。この地の繁栄は、かつて川を舞台に木材を運んだ「筏師(いかだし)」たちの文化と深く結びついていました。最盛期には地域経済を支え、多くの子供たちがその活気の中で育ちました。しかし、1960年代のダム建設や道路網の発達により筏流しが衰退すると、地域は深刻な過疎化に見舞われます。その影響は学校にも及び、1974年には近隣の篠尾小学校を統合するなど、地域の教育拠点を維持するための努力が続けられました 。それでも児童数の減少は止まらず、1987年には全校児童が11名となり、ついに1991年、在校生8名を最後に休校となりました 。
その後14年間、学び舎は静かな時を過ごしましたが、市町村合併を控えた2005年3月31日に正式に廃校となり、その歴史に幕を下ろしました 。
赤い瓦が美しい木造校舎は、廃校後も地域の宝として大切にされています 。現在はパン工房や集会所として活用されるほか、「木造校舎を残し隊」という市民団体が中心となり、未来へその姿を継承するための活動が行われています 。校舎は教育の場から、地域の記憶と再生を象徴する「宿り木」のような存在へと生まれ変わりました 。
これまで学校の運営にご尽力されてきた新宮市ならびに旧熊野川町の皆様に、心より敬意を表します。この学び舎を巣立った卒業生の皆様、そして教鞭をとられた先生方にとって、校庭の風景や教室の温もりは、今も色褪せることのない大切な思い出として心に刻まれていることでしょう。
(2024年9月執筆)
懐かしい記憶が蘇るという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
PHOTO: 廃校5000 様