熊野川町立小口中学校 閉校
- 文化・教育施設
熊野川の豊かな自然と、かつて隆盛を誇った林業に支えられた和歌山県旧熊野川町。この地に、熊野川町立小口中学校は地域の学び舎として存在しました。
1956年の熊野川町発足時、町内にあった5つの中学校の一つとして歴史を刻み始めました。当時の地域経済の根幹は、急峻な山々から切り出された木材を川で運ぶ筏師たちの活躍にありました。学校は、この活気ある共同体の子どもたちを育む、まさに地域の中核でした。しかし、高度経済成長期のダム建設や道路網の発達は、伝統的な林業の姿を大きく変え、深刻な過疎化を引き起こしました。1972年には町内の4つの中学校が統合されましたが、小口中学校は地域の最後の砦として独立を保ちました。それでも時代の大きな波には抗えず、1982年に惜しまれつつ閉校となりました。
学び舎としての役目を終えた校舎は、現在「小口自然の家」として生まれ変わっています。世界遺産・熊野古道の小雲取越と大雲取越を結ぶ要衝に位置し、国内外から訪れる多くの旅人を温かく迎え入れています。
その運営に尽力された旧熊野川町、そして現在の新宮市に深い敬意を表します。卒業生や先生方にとって、校舎は姿を変えましたが、あの緑豊かな谷間で過ごしたかけがえのない日々は、今もなお一人ひとりの心の中で鮮やかに輝き続けていることでしょう。
(2024年9月執筆)
長年に渡り、地域の子供達をお守り頂きありがとうございます。
PHOTO: 廃校5000 様