鳥取民藝美術館
- 文化・教育施設
鳥取民藝美術館は、1949年、鳥取市出身の医師・吉田璋也氏によって創設されました。吉田は、民藝運動の創始者である柳宗悦の思想に深く共鳴し、1931年から鳥取で新作民藝運動を展開しました。彼は、陶器や木工、和紙など鳥取の伝統的な手仕事に新たな価値を見出し、職人たちとともに製作・流通・販売の仕組みを築き上げました。
美術館は開館当初「鳥取民藝館」と称し、吉田が自ら蒐集した日本、中国、朝鮮半島、欧州などの古民藝や、職人と協働して生み出した新作民藝を展示しました。建物は元々衣装蔵を改装した小規模なものでしたが、1957年には現在の土蔵造りの建物が新築されました。吉田は「誰もが気軽に立ち寄れる美術館」を目指し、人通りの多い街道沿いに館を構えました。そして1962年、吉田の私立美術館だった同館は国に寄付され、財団法人化されました。2012年には建物自体が国の登録有形文化財に指定されています。現在は公益財団法人鳥取民藝美術館が管理運営を担い、約5000点に及ぶ収蔵品を保存・公開しています。展示品は陶磁器を中心に、朝鮮李朝の白磁や中国の木漆工品、世界各地の民藝品など多岐にわたります。
鳥取民藝美術館は、民藝運動の精神を現代に伝える拠点であり、地域の文化振興や職人育成にも大きな役割を果たしています。吉田璋也氏と歴代管理者様の尽力に多大なる敬意が表されます。手仕事の美と歴史に触れられるこの美術館を、ぜひ一度訪れてみてはいかがでしょうか。
(2025年5月執筆)
PHOTO:PIXTA