かわつ花菖蒲園 閉園
- 娯楽施設
近代水道の歩みと花菖蒲園の誕生
昭和10年(1935)に創設された川津浄水場は、坂出市の近代水道の重要拠点として、長きにわたり地域住民の暮らしを潤す生命線でした。時代が移り変わり、その役割を終えた施設はポンプ送水施設へと転換され、平成4年(1992)の市制施行50周年記念事業の一環として「かわつ花菖蒲園」へ生まれ変わりました。かつて水を濾過していた池を埋め立てた約1300平方メートルの親水空間には、開園当初は100種類近く、約3万本もの花菖蒲が所狭しと植えられました。讃岐富士などののどかな山並みを望む園内は、初夏の訪れを告げる風物詩として、毎年多くの見物客で賑わう全盛期を迎えました。
地域に愛された憩いの空間と温かな交流
園内には古いバルブ設備や藤棚が残され、飛び石を伝って花々を間近で鑑賞できました。キリンなどのオブジェは子どもたちを楽しませ、車椅子での来園にも配慮されるなど、世代を超えた憩いの場でした。公開期間中には賑やかな祭りも催され、伝統的な品種が咲き競う中、苗の分譲を心待ちにする声や、係員ののどかな談笑が響くなど、地域に根差した温かい交流の場として深く愛されていました。
時代の波に押された苦渋の閉園
しかし、令和の時代に入ると物価高騰による維持管理費の増大に直面し、規模縮小を余儀なくされました。傷心のなか迎えた令和8年(2026)5月27日、費用負担や人員不足から、35年間の歴史に幕を閉じることが発表されました。最後の公開となった同年6月には、静かに見頃を迎えた花々を小雨の中で名残惜しそうに愛でる人々の姿が見られ、6月14日をもってその扉を静かに閉じます。
美しい初夏の記憶を未来へ語り継ぐ
近代水道の遺構を活用し、長年にわたり美しい景観を維持し続けてきた関係者の皆様のご尽力に対し、深い敬意を表します。地域の人々に初夏の訪れを告げ、多くの笑顔をもたらした白や紫の花菖蒲の鮮やかな色彩は、閉園を迎えた後も人々の心の中に深く刻まれ続けることでしょう。素晴らしい思い出を紡いでくれた同園の記憶が、これからも地域の歴史とともに末永く語り継がれることが願われます。
(2026年6月執筆)
PHOTO:写真AC







