富良野・美瑛ノロッコ号 引退
- 乗り物
北の大地をのんびり駆けた観光列車の軌跡
平成9年(1997)6月24日、北海道の富良野線において、夏の風を肌で感じられる観光列車「富良野・美瑛ノロッコ号」が旭川駅と富良野駅の間で誕生しました。「ノロノロ」と「トロッコ」を掛け合わせた愛称の通り、雄大な景色をゆっくり楽しむコンセプトが人気を集めました。平成11年(1999)には沿線風景に調和する茶色の510系客車が導入され、木目調の座席や大きな開閉窓が旅情を誘いました。全盛期には冬の雪原ノロッコ号や蒸気機関車が牽引する列車も運行され、平成17年(2005)からは4両編成に増強されて最大約400人の乗客を乗せるなど、北海道の夏を代表する風物詩として多くの人々に親しまれてきました。
地域と乗客の心を繋いだ温かいエピソード
沿線では地域社会と一体となった温かい光景が見られました。平成11年(1999)に開設された臨時のラベンダー畑駅では、夏のピーク時に職員が仮設の環境で乗車券を販売する姿が風物詩となりました。車内では「ノロッコレディ」が特産品を販売し、旅のひとときを華やかに彩りました。美しい丘陵風景が広がるビュースポットで速度を落として走る列車は、地域と乗客を繋ぐ象徴でした。
時代の波と老朽化によるラストランへの道
時代とともに歩みを続け、令和2年(2020)には富良野線開通120周年を迎えましたが、車両の老朽化により、令和8年(2026)9月23日をもって最後の運行を迎えることが決定しました。ラストイヤーの運行初日となった同年6月6日には旭川駅で出発式が行われ、沿線の首長らによる聖華リレーが実施されました。同年8月29日と30日には長い歴史のフィナーレを彩る臨時列車が運行される予定です。
紡がれた記憶への敬意と未来への願い
約30年にわたり多くの観光客に感動を与え、地域の観光を支え続けてきたノロッコ号の功績は多大です。安全運行を維持し、温かいおもてなしを提供し続けた鉄道関係者や沿線住民の方々には、深い敬意と感謝の念を禁じ得ません。北の大地をのんびりと駆け抜けたブドウ色の車体と、大きな窓から流れ込んだ心地よい夏の風の記憶が、これからも人々の心に鮮やかに残り続けることが願われます。
(2025年1月執筆)

多くの人の思い出を詰め込んで、その歴史のカウントダウンを刻み始めました。
PHOTO:写真AC







