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福井市水道記念館

  • 文化・教育施設

足羽山の麓に静かに佇む福井市水道記念館は、大正時代の面影を今に伝えるモダンな洋風建築です。この建物は、福井市が近代都市へと歩み始めた1924年に、「足羽揚水ポンプ場」として建設された、市の水道事業発祥の地を象徴する施設です 。

当時の給水システムは精緻なものでした。まず木田地区の井戸から汲み上げた地下水を一本木浄水場で清浄な水へと処理し、その水をこのポンプ場が受け取ります。そして、ドイツ製の強力なポンプで足羽山山頂の配水池へと汲み上げ、そこから自然の圧力で市内全域へ配水する、まさに街の生命線を担う「心臓部」でした 。

先進的な鉄筋コンクリートで造られたこの建物は、福井空襲の戦火、そして1948年に街を襲った福井地震という幾多の災害にも屈することなく、その姿を保ち続けました 。約70年にわたり市民の暮らしを支え続けた後、1991年にポンプ場としての役目を終えましたが、その歴史的価値を惜しむ市民から保存を望む声が強く上がります。

この市民の想いが建物の運命を変えました。市は保存活用を決定し、修復工事を経て2004年、水道の歴史と水の大切さを伝える「福井市水道記念館」として再生を果たしたのです 。館内には、当時活躍した巨大なポンプがそのままの姿で展示され、2011年には国の登録有形文化財にも指定されました 。市民の誇りによって守られたこの貴重な産業遺産は、今も福井の歩みを静かに物語っています。

(2025年6月執筆)

PHOTO:PIXTA

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