敦賀赤レンガ倉庫
- 文化・教育施設
福井県敦賀市にある敦賀赤レンガ倉庫は、1905年、アメリカのニューヨーク・スタンダード石油会社によって石油の貯蔵用倉庫として建設されました。当時、敦賀港は日本と大陸ヨーロッパを結ぶ重要な国際都市として栄えており、鉄道と海運の発展の中心に位置した場所でもあります。外国人技師の設計によるこの倉庫は、海外からレンガを取り寄せて築かれ、内側には柱が見えない広々とした空間が特徴的です。
建設以降、敦賀赤レンガ倉庫は時代ごとに多様な役割を担ってきました。1940年には石油会社の撤退後、軍の備品倉庫として使われ、戦後は営業倉庫や昆布の貯蔵庫としても活用されていました。修復工事なども行われ、その後の長い年月を経て地域産業の変化とともにその役割を変遷させてきました。2003年には民間企業から敦賀市へ寄附され、2009年には北棟・南棟および煉瓦塀が国の登録有形文化財として正式に認定されました。市は現地保存と再活用のため、2014年に整備計画を策定。2015年には全面的な補強・修復工事を経て、北棟は「ジオラマ館」、南棟は「レストラン館」として生まれ変わりました。現在は鉄道と港の歴史や街並みを再現するジオラマ体験や、港町ならではの食事を楽しめる観光施設として、多くの人々に公開されています。施設の運営は敦賀市指定管理者制度のもとで行われており、その保存・活用に公的な権威が与えられていることも特筆できます。
長年にわたり地域の歴史と文化を見守ってきた敦賀赤レンガ倉庫。その価値を守り続ける運営者の皆さまへ深い敬意が表されます。歴史の息吹と港町敦賀のロマンを体感できるこの場所へ、ぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょうか。
(2025年6月執筆)
PHOTO:写真AC