埼玉県立大宮工業高等学校 閉校
- 文化・教育施設
埼玉県立大宮工業高等学校は、2025年に創立100周年を迎える伝統ある工業高校です。その歴史は、大正時代に遡ります。学校は1925年に大宮町立工業学校として開校し、当時は夜間授業から始まり、鉄道省東京鉄道局大宮工場技工見習教習所の施設を利用していました。その後、1938年に埼玉県大宮工業学校に改称し、戦後の1948年に新制の埼玉県大宮工業高等学校に改編され、工業技術者の育成拠点としての地位を確立しました。1982年には全日制課程で男女共学となりました。 当校の最も特筆すべき歴史は、公立工業高校として史上唯一、選抜高等学校野球大会(春の甲子園)で優勝を果たしたことです。この偉業は、地元の選手たちを中心に達成され、当校を「甲子園に最も近い公立高校」として、一時は部員数が100人を超えるほどでした。この誇り高き歴史は、2012年に建立された甲子園優勝記念の石碑によって、現在も大切に継承されています。
近年は、時代の変化に対応し、文部科学省の「マイスター・ハイスクール」事業を通じて、Society 5.0を実現するデジタルトランスフォーメーション人材の育成に注力しています。地域社会との関わりも深く、生徒たちは「SAITAMA 環境フェア」で環境測定装置の開発を発表したり、鉄道博物館の「高校生がつくる鉄道展」に参加し、精密な建築模型を製作・展示したりする など、実社会と結びついた「ものづくり」活動を展開しています。また、地域の小・中学校教員向けのものづくり研修を実施するなど、地域コミュニティとの連携強化を図っています。
当校は現在、大きな歴史の転換点にあります。2026年4月に、浦和工業高等学校と統合し、大宮科学技術高等学校(新設校)として開校する予定です。新校は現在の当校の敷地に設置され、理工系教育に重点を置くことで、埼玉県の工業・情報教育を牽引する中心的な役割を担います。この統合により、独立校「大宮工業高等学校」としての歴史は閉幕となりますが、野球部が「伝統を再び」のスローガンを掲げて最後の夏を戦ったように、その伝統と「OMIYA」の精神は新校に引き継がれることになります。この統合と新たな学び舎の設立に向け、尽力されている運営主体の皆様の努力に、深く敬意を表します。そして、長きにわたり宮工を支えてこられた卒業生、教職員、すべての関係者の皆様におかれましては、胸に刻まれた「至誠一貫 質実剛健」の誇りを今一度心に描き、思い出を振り返る機会となることを願っております。
(2025年11月執筆)







