旧青木家那須別邸
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旧青木家那須別邸は、明治時代にドイツ公使や外務大臣などを歴任した子爵・青木周蔵(1844-1914)が、那須野ヶ原の広大な私有農場(青木農場)内に建てた別荘です 。那須野ヶ原は、水利に乏しく農地には不向きな荒野でしたが、明治初年頃から、明治政府の殖産興業政策のもと、青木周蔵ら華族階級が私財を投じて大規模農場を開拓・経営した、近代化の歴史を象徴する地域です 。この開拓の物語は、2018年に日本遺産「明治貴族が描いた未来〜那須野が原開拓浪漫譚〜」にも認定されています 。
別邸は、農場管理施設を兼ねて1888年に中央棟が創建されました 。ドイツ公使を長く務め「ドイツ翁」とも呼ばれた青木周蔵のドイツ文化への憧れを背景に、設計はドイツで建築学を学んだ松ヶ崎萬長(つむなが)が手がけました。この建物は、松ヶ崎が国内に残した極めて稀少な現存作品としても貴重です 。建築には、軸組や小屋組にドイツ様式の構法が採用され、屋根裏を広く利用できる半小屋裏構造や、筋交いを多用した堅牢な軸組が特徴的です 。外観は、鱗形の白いスレートで覆われ、中央棟上部には物見台が設けられた優雅な洋館です 。
創建後、増築が重ねられ、ほぼ現在の姿となりました 。この別邸は、明治期の開拓経営者の生活と、ドイツ様式の建築技術を伝える貴重な建造物であり、その歴史的・建築学的な価値から、1999年に国指定重要文化財として指定を受けています。
平成初期に栃木県に寄贈された後、復元改修を経て、現在は道の駅「明治の森黒磯」に隣接するとちぎ明治の森記念館として一般公開され 、「青木邸」として親しまれ続けています。那須野ヶ原の開拓精神と、華族が追求した西洋文化の粋を今に伝えるこの歴史的建造物の維持管理に携わる関係各位には、深く敬意が表されます。明治の熱気が残るこの地で、ぜひ歴史のロマンに触れる旅を体験してみてはいかがでしょうか。
(2025年11月執筆)







