Final 2026年7月4日 記事資生堂アートハウス 閉館のイメージ画像

資生堂アートハウス 閉館

  • 文化・教育施設

美と文化を紡いだ半世紀の軌跡

静岡県掛川市に1975年(昭和50年)に主力工場が誕生したことを背景に、その3年後となる1978年(昭和53年)11月、企業メセナの拠点として「資生堂アートハウス」が開館しました。開館当初は、戦前からの香水瓶などの自社製品やポスターといった宣伝制作物を展示する静かな空間でしたが、2002年(平成14年)の改装を機に企業資料を隣接する「企業資料館」に移し、約1600点の近現代美術品を専門に紹介する本格的な美術館へと生まれ変わりました。谷口吉生氏らが設計した建物は1979年度(昭和54年)に日本建築学会賞を受賞するなど、建築界でも高く評価され、長年にわたり芸術を愛する多くの人々に親しまれてきました。


地域に愛されたモダニズムの傑作

のどかな風景に溶け込む銀色の建物は、2つのブロックを緩やかなS字形のホールでつなぐ美しい意匠で、新幹線の車窓からもその姿を楽しむことができました。閉館の知らせが流れた2025年(令和7年)11月以降は、多くの美術ファンや地域住民が詰めかけ、館内は別れを惜しむ熱気に包まれました。大畑昌弘館長が地元の協力への深い感謝を語ったように、この空間は半世紀にわたり地域社会と温かく結びついていました。


時代の波と惜しまれつつ迎える幕引き

資生堂は経営戦略の一環として、文化発信機能を東京の銀座資生堂ギャラリーへ集約することを決定しました。これにより、2025年(令和7年)11月29日に企業資料館が閉館し、資生堂アートハウスも2026年(令和8年)6月27日の閉館を予定していました。しかし、直前に接近した台風の影響により臨時休館を余儀なくされ、最終開館日は2026年(令和8年)7月4日へと延長される異例の展開を迎えました。


記憶の中に生き続ける美の殿堂

閉館後も、約1600点に及ぶ貴重な収蔵品は掛川の地で大切に保管され、日本建築学会賞に輝いた美しい建物や屋外彫刻もそのまま風景の一部として残り続けます。これまで素晴らしい芸術の数々を提供し、地域文化を豊かに彩ってくれた美術館とすべての関係者へ深く敬意を表します。この地で育まれた美の記憶が、これからも人々の心の中で鮮やかに生き続けることが願われます。

(2026年6月執筆)

PHOTO:写真AC

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