鳥潟会館
- 文化・教育施設
鳥潟会館は、秋田県大館市花岡町に位置し、慶長年間(1596年~1614年)から続く鳥潟家の旧邸宅と庭園を中心とした歴史的施設です。
主屋の原型は宝暦年間に建築されたものですが、昭和11年(1936年)に曳家された上で大規模な増改築が行われました。特に増築部分には京風の数寄屋造りの意匠が色濃く反映されています。 その後、1935年から1940年にかけて、鳥潟家第17代当主の鳥潟隆三博士によって大規模な増改築と庭園整備が行われました。当時、京都帝国大学の教授を務めていた隆三博士は、自身の深い見識と人脈を活かして京風の意匠を随所に取り入れることを企図し、延べ1000人を超える京都の大工、左官、庭師らを招き、細部までこだわり抜いた邸宅と庭園を完成させました。これにより、敷地は8000㎡を超える広大なものとなり、建築と庭園が一体となった文化的な景観が誕生しました。
庭園は池泉回遊式となっており、池の周囲には京都鞍馬石など各地から取り寄せた名石が配され、茅葺き屋根の茶室や中門など伝統的な建造物も備えています。1951年には土地と建物が花岡町に寄付され、一般に公開されるようになりました。その後、平成23年(2011年)には建造物群が秋田県指定有形文化財に、庭園が秋田県指定名勝に指定されました。さらに令和6年(2024年)には、庭園が国指定名勝となり、その文化的価値は国レベルで認められています。現在は大館市教育委員会が運営を担い、地域文化の象徴としてだけでなく、市民や観光客の憩いの場としても愛されています。
長い歴史の景観を守り続ける運営者の尽力を深く考察します。 ぜひ現地で足を運び、四季折々の鳥潟会館庭園と歴史を薫る邸宅の素晴らしさを直接ご体験ください。
(2025年6月執筆)
PHOTO:PIXTA