記事観瀾閣のイメージ画像

観瀾閣

  • 文化・教育施設

瀬戸内海に浮かぶ下蒲刈島の三之瀬地区は、かつて西国大名の参勤交代や朝鮮通信使が寄港し、海上交通の要衝として栄えた歴史ある港町です。この地に、周囲の和風建築とは一線を画す意匠を有する「観瀾閣(かんらんかく)」が佇んでいます。

観瀾閣は、1935年に建設されました。施主は当地出身で、満州土木建築業協会の理事長を務めた榊谷仙次郎です。彼はこの建物を自身の別荘として建てました。構造は木造2階建ての瓦葺きですが、外壁全体にタイルを張り巡らせることで、中国の建築意匠を取り入れた極めて特異な外観を呈しています。内部の建具や欄間にも高度な職人技術が尽くされており、昭和初期の別荘建築として高い水準を誇ります。特筆すべきは、海岸沿いの護岸と一体化するかのような立地です。海を間近に臨むその姿は、往時の繁栄と当主の美意識を今に伝えています。その建築的価値と希少性が公に認められ、1997年には国の登録有形文化財に登録されました。

潮風にさらされる厳しい環境下で、この貴重な文化財を長年にわたり維持・管理され続けている所有者および関係者の皆様には、深く敬意が表されます。
通常は外観のみの見学となりますが、江戸時代の風情を残す三之瀬の町並みと、昭和のモダンな息吹が同居する景観は格別です。歴史ファンの皆様には、ぜひ現地を訪れ、その唯一無二の佇まいを肌で感じていただきたく思います。

(2025年12月執筆)

同じ都道府県の記事

同じカテゴリーの記事

ファイナルアクセス会社サイトはこちら

残り日数で探す

記事ランキング※24時間以内

Final Access Books

注目コンテンツ これが最後です

都道府県から探す