いろは丸展示館
- 文化・教育施設
いろは丸展示館は、広島県福山市鞆町鞆に位置し、幕末の歴史を今に伝える貴重な施設です。1867年5月26日、坂本龍馬率いる海援隊の蒸気船「いろは丸」は、紀州藩の軍艦「明光丸」と鞆の浦沖で衝突し、積み荷とともに沈没しました。この事故は日本初の蒸気船同士の衝突であり、海難審判や損害賠償交渉へと展開しました。交渉の中で、龍馬は導入間もない国際法「万国公法」を根拠に主張を展開し、紀州藩から8万3千両の賠償金を得ました。この事件は、日本が近代的な法制度を学び、国際社会へ歩み出す契機となりました。
当館の開館は1989年。館は江戸時代に建てられた蔵「大蔵」をそのまま活用しており、太い梁やなまこ壁が往時の鞆の浦の繁栄を今に伝えます。館内には、5回に及ぶ潜水調査で引き揚げられた「いろは丸」の遺物や、事件の経緯を伝える写真・イラスト、沈没状況を再現した大ジオラマが展示されています。また、2階には坂本龍馬と海援隊士らが交渉の間に身を隠した部屋が忠実に再現され、等身大の龍馬人形が来館者を迎えます。建物自体も歴史的価値を有し、国の登録有形文化財にも指定されています。
いろは丸展示館は、歴史愛好家や坂本龍馬ファンのみならず、鞆の浦を訪れる多くの人々にとって、幕末の激動期を体感できる貴重な学びの場です。展示を通じて、当時の社会情勢や人々の思いに触れ、歴史への理解を深めることができます。是非当地を訪問し、歴史の一端に思いを馳せ、自身の記憶に残る特別な瞬間を刻んでみてはいかがでしょうか。
(2025年5月執筆)
PHOTO:写真AC