須花トンネル
- 建物・施設
佐野市と足利市を結ぶ県道の須花坂には、3本のトンネルがあり、作られた時期から、明治トンネル・大正トンネル・昭和トンネルと呼ばれています。ここでご紹介する須花トンネル(栃木県佐野市下彦間町)は、最初につくられた明治トンネルです。
当時、足利方面へは遠回りする道しかなかったこの地で、地元の有志が寄付金を募り、1881年(明治14年)に工事が始まりました。人の力のみで掘り進めるという手掘り工事の困難に直面し多くの人が諦める中、地元の長であった田島茂平氏は最後まで一人で工事を続けました。彼は私財を投じ、8年もの長い年月をかけてついにトンネルを完成させたという史実が伝わっています。
出来上がったトンネルは、全長117m、幅2m。人ひとりがやっと通れるほどの大きさではありますが、地元の人たちに大変重宝されたということです。そして歴史的価値が認められ須花の明治トンネルは、地域の発展に尽くした偉大な先人の行いを学ぶ教材として、2009年に土木学会選奨土木遺産に認定されました。
現在では、崩落の危険性などから立ち入りが禁止されていますが、入口を臨むところまで近づくことはできるようです。この地を訪れて、苦難に負けず偉業を成し遂げた先人の強い志に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
(2023年6月執筆)
PHOTO:PIXTA