Final 2027年6月30日 記事神戸商船三井ビル 閉館のイメージ画像

神戸商船三井ビル 閉館

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神戸商船三井ビルは、1922年、第一次世界大戦後の混乱と大正デモクラシーの空気が交錯する中、神戸市中央区海岸通に竣工しました。設計を手掛けたのは、後にダイビル本館や綿業会館などで知られる新進気鋭の建築家・渡辺節です。当時、若手建築家として名を馳せていた村野藤吾も関わったとされ、日本の近代オフィスビルの先駆けとなる存在となりました。

同ビルは、大阪商船(現・商船三井)の神戸支店として建設され、神戸港に面した立地から、日本の海運・港湾事業の重要な拠点として機能してきました。白く輝く外観は、港を目指す船からもひときわ映えるシンボルとなり、旧居留地地区のランドマークとして親しまれています。

戦争や高度経済成長、バブル景気とその崩壊、さらには1995年の阪神・淡路大震災など、数々の歴史的困難を経ても、ビルはその姿を保ち続けました。震災後には最新の耐震補強が施され、大正期に建てられた大規模オフィスビルとしては、ほぼ唯一完成時の姿を残す貴重な建物として高く評価されています。現在も、1階には商業施設などが入り、そのほかの階には海運関連企業や専門事務所など約80社・団体が拠点を構えています。重厚な外観は観光客やカップルの撮影スポットとしても人気です。

しかし、設備の老朽化が進み、維持管理が困難となったため、所有者である商船三井は2027年6月末をもって賃貸借契約を終了し、閉館する方針を明らかにしています。閉館後のビルの取り扱いは現時点で未定とのことです。歴史を刻むこの建物は、神戸の近代化とともに歩み、多くの人々の記憶とともにあります。神戸商船三井ビルの運営主様に敬意を表しつつ、このような歴史的建築物が果たしてきた役割や、そこに集う人々の思い出が、これからも末永く語り継がれることが願われます。

(2025年5月執筆)

PHOTO:写真AC

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