岡崎市立鳥川小学校 閉校
- 文化・教育施設
幾多の火難を乗り越え、環境教育の聖地へ
明治8年(1875)、慈徳院の本堂を仮校舎として産声を上げた鳥川小学校は、地域と共に歩む教育の場として長い歴史を刻み始めました。大正10年(1921)には小デノ沢の地へ校舎を建設・移転しましたが、昭和18年(1943)と昭和57年(1982)のいずれも「2月8日」という数奇な日に二度の全焼火災に見舞われます。しかし、その都度住民の献身的な力で復興を遂げ、昭和53年(1978)頃からは激減したホタルを取り戻す活動が本格化しました。山を守り川を浄化する真摯な取り組みは、やがて「環境教育の先進地」として全国にその名を知らしめ、多くの人々を惹きつける全盛期を築き上げたのです。
時をつなぐ古時計と、三代で育んだ郷土愛
二度目の大火を奇跡的に免れた「大きな古時計」は、今も地域の絆を象徴する宝物です。一度は止まった針も、閉校直前に職人の手で蘇り、再び時を刻み始めました。また、「鳥川三代のつどい」や「寿会(敬老会)」、「鳥川ホタル保存会」をはじめとする地域住民の支援を通じ、子供たちはホタルだけでなく、山や川を含めた生態系全体の尊さを学んできました。ホタルを増やすには、その背後にある豊かな自然環境こそが大切であるという「生物多様性」の視点。地域が一つの家族のように学校を支え続け、子供たちと共に見出したその教えは、この地の確かな誇りとなっています。
閉校から「ホタル学校」へ、受け継がれる志
過疎化と少子化の波には抗えず、平成22年(2010)3月31日、全校児童6名に見守られながら、岡崎市立鳥川小学校は136年の歴史に幕を下ろしました。しかし、長年培われた学びの灯が消えることはありませんでした。平成24年(2012)4月1日、校舎はリノベーションを経て「岡崎市ホタル学校」へと再生を遂げます。平成20年(2008)に「平成の名水百選」に選ばれた美しい湧水群とともに、現在は環境学習や地域振興の拠点として、今もなお多くの来訪者を温かく迎え入れ、自然保護の大切さを伝え続けています。
清流の輝きと共に、未来へ語り継ぐ誇り
度重なる火災という困難を乗り越え、かけがえのない豊かな自然を次世代へと繋いだ先人や関係者の皆様に、深い敬意を表します。学び舎としての役割は姿を変えましたが、鳥川の地に流れる清らかな水とホタルの淡い光は、かつての子供たちが守り抜いた情熱の証そのものです。たとえ時代が移ろい、景色が変わったとしても、この場所で育まれた環境への想いと「大きな古時計」の音色は、これからも未来を照らす希望の道標として、鳥川の里に響き続けることでしょう。
(2026年4月執筆)

深い歴史を有する伝統校でした。







