旧市立釧路図書館 解体/取壊
- 文化・教育施設
釧路市民の知的好奇心を満たし、学びと交流の場として長年親しまれてきた釧路市立図書館。その歴史は、1925年に「御成婚記念釧路市簡易図書館」として、当時の公会堂の一室にささやかに開設されたことから始まります 。これが、地域の知識の灯台としての第一歩でした。戦後の1950年には「市立釧路図書館」へと改称し、市民にとってより身近な存在へと歩みを進めます 。翌1951年には、初めての独立した建物が開館し、利用者が自由に本を手に取ることができるようになるなど、図書館機能の充実が図られました 。この時期から、図書館は本格的に地域の知の拠点としての役割を担い始めます。そして1973年1月、多くの市民にとって馴染み深い幣舞町4番地に新館が完成し、「市立釧路図書館」の本館として新たな歴史を刻み始めました 。
しかし、時代の移り変わりとともに施設の老朽化や収蔵能力の限界といった課題も生じ、新たな図書館への期待が高まります。幣舞町の図書館は、2017年9月末をもってその長い歴史に幕を下ろし 、翌2018年2月には、北大通に最新設備を備えた新しい中央図書館が開館しました 。
長年親しまれた旧市立釧路図書館(幣舞町)の建物は、同じく役目を終えた旧青少年科学館とともに、2025年度に解体される見込みです 。これは、長年の懸案であった施設の整理が進むことを意味します。それぞれの時代の図書館は、釧路の文化を育み、市民の知的好奇心に応え続けてきました。その運営に携わってこられた全ての方々への深い敬意とともに、公会堂の一室から始まった小さな図書館、そして幣舞町の温かな空間で過ごした時間や、そこで出会った一冊の本が、今も多くの人々の心に残る大切な記憶として息づいているのではないでしょうか。
(2025年6月執筆)
PHOTO:PIXTA