旧中島浄水場配水塔
- 文化・教育施設
長岡市水道公園に佇む「旧中島浄水場配水塔」は、地域の歩みとともに時を重ねてきた貴重な歴史的建造物です。その歴史は20世紀初頭に遡ります。市制施行後の長岡市では、急増する人口と都市生活の発展に対応するため、安全な水道整備が喫緊の課題となりました。1923年に設計が進められ、1926年に配水塔の建設工事が始まりました。1927年、信濃川から取水した水を浄化し、配水塔へと送るシステムが完成。当時としては先進的な構造であり、長岡の生活基盤を支えました。
その後、戦中には空襲による被害も受けながらも補修され、水道事業拡張とともに施設も逐次改良を重ねました。長らく市民の上水道供給に欠かせない役割を果たしてきましたが、1993年に浄水場としての運転を終え、1996年には大規模な改修が行われました。また、1998年には国の登録有形文化財となり、美術的・技術的な価値も高く評価されるに至りました。
配水塔は鮮やかな赤い屋根と特徴的な外観で「水道タンク」の名で親しまれ、長岡市民にとって心のシンボルです。水道公園として再整備されてからは、歴史を伝えるランドマークとして親しまれ、映画やプロモーション映像にもたびたび登場するなど、記憶と現在を結び続けています。多世代にわたり憩いの場となってきたこの施設を維持・運営する関係者の尽力に、心から敬意を表します。そして訪れる人々が、その場で過ごした思い出とともに、長岡の歴史を新たに刻んでいくことが願われます。
(2025年7月執筆)
PHOTO:PIXTA