【美祢線】厚狭駅 鉄道駅として廃駅
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厚狭駅は、美祢線が発着する1番のりばを持つ地上駅と、山陽新幹線が停車する高架駅が一体化した構造が特徴です 。かつては石炭輸送で栄え、多くの線路を有していましたが、現在は合理化された配線となっています 。新旧の設備が混在し、鉄道の歴史を体現する駅です。1900年に山陽本線の駅として開業して以来、美祢線の起点として、また山陽本線と交差する重要な交通の要所として、長きにわたり地域社会を支えてきました 。開業当初から旅客と貨物の両方を扱い、特に美祢地区で産出される石炭や石灰石を輸送する拠点として、日本の産業発展に貢献しました 。
貨物輸送の最盛期には、石炭や石灰石を積んだ貨物列車がひっきりなしに発着し、駅構内は産業を支える活気に満ちていました 。旅客ホームでは、通勤・通学の人々や遠方へ向かう旅行者で賑わい、厚狭駅は地域にとって人々の暮らしと産業が交差する中心地でした。 しかし、1970年代に入るとエネルギー革命により炭鉱が閉山し、貨物輸送量は大きく減少 。駅の役割は、地域住民の日常を支える旅客輸送が中心となっていきました。近年では、2010年と2023年の豪雨災害で美祢線が甚大な被害を受けるなど、駅を取り巻く環境は厳しさを増していました 。
そして2025年、豪雨災害からの復旧が困難であることなどを背景に、美祢線を鉄道からバス高速輸送システム(BRT)へ転換する方針が固まりました 。これにより、美祢線の厚狭駅が担ってきた美祢線の起点駅としての鉄道の歴史は、静かに幕を下ろすことになります。駅舎やホームの記憶、そして地域の暮らしとともにあった厚狭駅の風景は、今も地元の人々の心に深く刻まれています。長年にわたり地域社会に貢献し続けた運営者の皆様に、多大な敬意が表されます。
(2025年8月執筆)
PHOTO:写真AC