藤田記念庭園 洋館
- 文化・教育施設
津軽の城下町・弘前市上白銀町の段丘上に、岩木山の雄姿と呼応するように佇む国登録有形文化財「旧藤田家別邸洋館(きゅうふじたけべっていようかん)」は、大正ロマンを象徴する地域の至宝です。本邸は、弘前出身で日本商工会議所初代会頭を務めた実業家・藤田謙一氏が、大正10(1921)年に郷土への還元と自身の安息の地として建設しました。設計は堀江金蔵、施工は堀江彦三郎が担い、明治期の名棟梁・堀江佐吉の技術的系譜を継ぐ一族が総力を結集した、北東北における近代建築の到達点といえるでしょう。
木造2階建の主屋は、外壁を落ち着いた灰色のモルタル塗りで仕上げる一方、八角平面の塔屋や屋根の一部には鮮やかな赤色の鉄板を用い、雪景色の中で際立つ美しいコントラストを創出しています。構造的には、切妻造(きりづまづくり)と袴腰(はかまごし)屋根を組み合わせた複雑な屋根構成を持ち、ドーマー窓やベイウィンドウ(出窓)、そしてサンルームなど、西洋の様式を巧みに取り入れつつ、北国の気候風土に適応させた高度な建築技術が確認できます。現在は「大正浪漫喫茶室」や資料室として公開され、往時の富豪の生活空間が、現代の憩いの場として鮮やかに蘇っています。
激動の時代を経てなお、この貴重な文化遺産が美しく維持されている背景には、所有者および管理者の皆様による献身的な保存活動があり、その深い愛情に心より敬意を表します。実業家の郷土愛と建築家の匠の技が交差するこの場所へ、歴史の息吹を感じにぜひ足をお運びください。
(2026年1月執筆)







