記事湯吹きの滝のイメージ画像

湯吹きの滝

  • 建物・施設

谷川岳のふもとに築かれた砂防の要 ― 湯吹きの滝、竣工の記録

群馬県利根郡みなかみ町大字湯桧曽、谷川岳の険しい山肌が迫るこの地で、1940年(昭和15年)から1941年(昭和16年)にかけて、湯桧曽川の激流を抑えるための堰堤建設が行われました。設計は群馬県の技術者・長谷川四郎氏と河野操氏が手がけ、施工も群馬県が直接担当しました。堤高11メートル、堤長112メートル、総容積1,669.27立方メートルというこの構造物は、群馬県内で初めて導入されたアーチ型堰堤としての位置づけを持ちます。堰堤の構造は、外側に雑割石を積んだ「表面雑割練石積」とし、中詰めにはコンクリートと玉石を5対5の比率で施工した「中埋玉石コンクリート」が充填されています。


シリンダー公式が導き出した、円形のアーチ

設計にあたっては、堤体が受ける水圧や土砂圧を安全に分散させるため、堤体を「薄肉の円筒」として捉える「シリンダー公式」が用いられ、上空から見るとほぼ正円に近い半円形のアーチが描かれました。この曲線は、川幅の狭い地形の中で水が越流する「水通し」の幅を最大限に確保するための工夫でもあります。通常、アーチ式堰堤では落下する水が中央に集中するため、下流の川底の洗掘を防ぐ「副堰堤」や「水叩き」が設けられますが、この堰堤は現地の河床岩盤が良好であったため、これらを持たない「単独堰堤」として築造されました。


80年の時を経て見出された、土木遺産としての価値

竣工から約80年が経過した2019年(令和元年度)、この堰堤は公益社団法人土木学会により、令和元年度の「選奨土木遺産」に選奨(認定)されました。群馬県初のアーチ式堰堤であり、谷川岳と一体となって景観を形成する貴重な土木遺産として評価されています。


砂防施設として、今も川を受け止める堤

湯桧曽川に土砂災害の脅威から下流の暮らしを守る砂防施設として築かれたこの堰堤は、谷川岳の雄大な山並みと調和しながら、今もその役割を果たし続けています。

(2026年8月執筆)

PHOTO:写真AC

同じ都道府県の記事

同じカテゴリーの記事

ファイナルアクセス会社サイトはこちら

残り日数で探す

記事ランキング※24時間以内

Final Access Books

注目コンテンツ これが最後です

都道府県から探す