【土讃線】吾桑駅舎 解体
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高知県須崎市吾井郷に位置する吾桑駅は、四国旅客鉄道(JR四国)土讃線にあり、地域の歴史的な変遷を見守ってきた駅です。吾桑駅の開業は、1924年に遡ります 。この年は、高知線(現在の土讃線の一部)の須崎駅から日下駅間が開通した時期にあたります 。この鉄道路線の開通は、四国山脈によって長く閉ざされていた「陸の孤島」とも呼ばれた土佐地域と、京阪神・中国方面との間に鉄路の連絡をもたらし、人の往来や物資の流通、文化交流の面で画期的な発展をもたらすものとして、大きな歴史的意義を持って迎えられました 。吾桑駅は、この近代化の初期において、地域住民の移動と生活を支える拠点としての役割を担い始めました。
この駅の大きな特徴は、開業当初から存在していたと考えられる木造平屋建ての駅舎です。外壁には旅情を誘うオレンジ色の漆喰が使われ、多くの鉄道ファンから親しまれてきました。しかし、時代の変遷と鉄道運営の効率化に伴い、駅の体制は変わります。吾桑駅は、1970年をもって、駅員が配置されていた有人駅から、旅客の取り扱いが無人化されました 。
現代の利用状況を見ると、吾桑駅は現在も地域輸送を担い続けていますが、2015年の1日平均乗降人員は94人というデータが示されており、利用者の数は減少傾向にあります 。かつては須崎市内の堅田酒店が切符の販売を行う簡易委託駅として地域との結びつきを保っていましたが、現在はその委託が解除され、切符の販売は行われていません 。
そして、この歴史的な木造駅舎は、近い将来、大きな転機を迎えることとなっています。老朽化に伴い、既存の駅舎の解体が検討されている中、これに代わり、須崎市は地域活性化を目指した新しい駅舎の整備計画を進めています。新駅舎は木造平屋建て100平方メートル以内の規模で、改札口などの駅機能に加え、地域の自主組織が運営する観光情報発信を行う「集落活動センター」を兼ねた施設として建て替えられます。この計画は、駅を単なる通過点ではなく、地域の活性化を担う複合的な拠点として再生させようという、現代的な取り組みの一環です。
吾桑駅という古い歴史を持つ鉄道インフラの維持に努め、また地域社会と連携し、駅の新しいあり方を模索されている四国旅客鉄道株式会社(JR四国)ならびに須崎市、吾桑地域自主組織の皆様には、深く敬意が表されます。まだ少し時間はありそうです。ぜひ鉄道の旅をご計画いただき、新たな役割を担う前のこの貴重なレトロな駅を、ぜひ訪れてみることをお勧めいたします。
(2025年11月執筆)
PHOTO:PIXTA







