【民宿】勇助 閉店
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五箇山・相倉合掌造り集落の民宿「勇助」は2025年3月31日、58年間続いた歴史の幕を下ろしました。
築約150年を数える大型合掌造り建築を活かした歴史ある宿として親しまれてきました。江戸時代末期から明治時代にかけて建てられた相倉の合掌造り家屋群の中でも、特に古い歴史を誇る建物の一つです。1966年頃、相倉集落が国指定史跡に内定したタイミングで民宿としての営業をスタートさせました。当時の五箇山では養蚕業や和紙生産が衰退し、地域の産業転換が進む中、合掌造りの文化的価値に注目した観光活用が始まっていたのです。こうした時代の流れを受けた開業でした。
近年は1日1組限定の宿泊体制を貫き、長年の歳月を刻んだ合掌造りの空間を体感できる点が最大の魅力。60度の急勾配屋根や「チョンナ」と呼ばれる曲がり梁、釘を使わない伝統工法など、合掌造りの建築技術を間近で観察できる貴重な場として人気を博しました。
多くの人に惜しまれた閉館となりましたが、今後は展示館として新たな使命を担うことになりそうです。世界遺産登録された相倉集落が掲げる「伝統的居住形態の顕著な例」という価値を、体現する建物です。宿泊施設としての役目を終えた今も、江戸時代から受け継がれる建築技術と人々の生活文化を伝える貴重な場所として、静かにその存在感を放ち続けることでしょう。ご興味のある方はぜひ一度現地に足を運んでみてはいかがでしょうか。
(2025年4月執筆)
PHOTO:PIXTA
「砂の器」は警視庁刑事・今西栄太郎が蒲田駅近くで発見された身元不明男性の殺害事件を追うミステリーです。捜査は東北なまりの「カメダ」という言葉を手がかりに進み、紙吹雪から血液付着の布切れを発見。やがて新進音楽家・和賀英良が浮上します。彼の正体はハンセン病の父を持つ本浦秀夫で、過去を隠すため恩人を殺害した過去が明らかに。砂上の楼閣のような栄光の儚さを描きます。
相倉集落は1974年公開の当作品のロケ地として使用されました。この機会にぜひご覧になってはいかがでしょうか。