ホテル立山 宿泊事業終了
- 商業施設
1971年の立山黒部アルペンルート全線開通は、日本の山岳観光に新たな扉を開きました 。これまで一部の登山家しか目にできなかった雲上の絶景を誰もが楽しめるようになったのです。この歴史的な事業の中核を担うべく、ルート最高地点の標高2450mに計画されたのが「ホテル立山」でした。
1972年9月、5年の歳月と平地の3倍もの巨費を投じた難工事の末、ホテルは開業しました 。それは、日本で最も標高の高い場所に誕生した本格的なリゾートホテルであり、山岳観光の常識を覆す出来事でした。単なる宿泊施設ではなく、「星にいちばん近いリゾート」として、満天の星空観賞会や荘厳なご来光、春の雪の大谷など、宿泊者だけが味わえる特別な体験を提供し続けました 。その快適さとおもてなしは、高地での滞在を誰もが楽しめるものへと変え、半世紀にわたり室堂平の観光拠点として、数えきれない人々の思い出を彩ってきました。
多くの旅行者に愛されてきましたが、2026年8月31日をもって、その宿泊サービスの歴史に幕を下ろすことが発表されました 。厳しい自然環境の中、半世紀にわたり訪れる人々を温かく迎え続けた運営者様への敬意は尽きません。その扉が閉じる前に、星空を見上げた夜や、ご来光に染まる山々を眺めた朝など、数多の記憶が宿るこの場所を訪れ、自らの思い出を振り返る最後の機会としてみてはいかがでしょうか。
(2025年8月執筆)
大切な思い出をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
PHOTO:PIXTA