【美祢線】湯ノ峠駅 鉄道駅として廃駅
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湯ノ峠駅(JR美祢線)は、1921年に開業し、山口県の静かな山間部に位置する駅として、その歩みを始めました。盆地を抜ける美祢線の中でも、湯ノ峠駅は主要路線との結節点から4.2kmという利便性の高さがありました。駅構造は、2つの地上ホームが反対側に設置され、跨線橋で連絡されるシンプルな設計で、現在は無人駅となっています。駅周辺には田園風景や温泉地・川が広がり、地元住民や観光客を温かく迎えてきました。
かつては沿線に炭鉱や石灰石採掘場が点在し、貨物輸送が地域産業の血管として稼働していました。時代とともに産業構造は変化し、1980年代以降、貨物列車の運行は次第に減少し、やがて旅客サービスが主となりました。利用客が減少するなかでも、地域住民にとっては通勤・通学、生活の交通手段としての役割を終始担ってきました。
2010年と2023年には豪雨災害により路線が大きな被害を受け、その都度、復旧への努力が重ねられてきましたが、近年の自然災害と需要減少、維持管理の難しさから、従来の鉄道路線の再建を断念し、バス高速輸送システム(BRT)など新たな交通システムへの転換が検討されています。全国的にも多様なモビリティ導入や、バス・AI活用の交通体系整備が進むなか、湯ノ峠駅もその流れに乗り、鉄道駅としての長い歴史に幕を下ろすこととなりました。
100年以上、地域とともに歩み、人の流れと暮らしを静かに支え続けたJR美祢線湯ノ峠駅。この地を見守り続けた運営者・関係者様の尽力に、心より深い敬意を表します。
(2025年8月執筆)
多くの人々の思い出を詰め込んでその歴史の幕を下ろします。
PHOTO:写真AC