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鴨ヶ浦塩水プール

  • 文化・教育施設

鴨ヶ浦塩水プールは、石川県輪島市の鴨ヶ浦海岸に位置する、全国的にも珍しい海水を利用した屋外プールです。その起源は1935年、昭和10年頃にさかのぼります。当初は海魚の観賞や生け簀として岩礁を活用した施設として築かれました。戦後、地域の学校にはプールがなかったため、地元の水泳協会が中心となり寄付を募り、児童の水泳技術向上を目的に水泳用プールとして改修が進められました。1949年と1955年の2度の大規模な整備を経て、縦25メートル、横13メートルの本格的なプールが完成し、コンクリートで縁が整えられました。

このプールの最大の特徴は、南北に設けられた取排水口から海水が自然に流入・流出する仕組みにあります。自然の岩礁をそのまま活かした構造は、全国的にも類例が少なく、魚と一緒に泳げるという独自の体験を提供してきました。地元の子どもたちの水泳授業や市民の憩いの場として長年親しまれ、オリンピック銀メダリストの山中毅もここで泳いだことがあるなど、地域のスポーツ文化の発展にも寄与してきました。2018年には、その歴史的価値と独自性が認められ、国の登録有形文化財に指定されました。しかし2024年1月の能登半島地震により、周辺の地盤が大きく隆起し、海水の取水が困難となるなど、現在は厳しい状況に直面しています。

鴨ヶ浦塩水プールは、地域の人々の思いと努力によって守られてきた貴重な文化遺産です。その歴史と、現在も管理・保存に尽力する皆様に心から敬意を表します。輪島を訪れる際は、ぜひこの特別な場所に足を運び、自然と人の営みが織りなす景観と歴史に触れてみてください。

(2025年6月執筆)
PHOTO:写真AC

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