弘前学院外国人宣教師館
- 建物・施設
弘前学院外国人宣教師館は、青森県弘前市にある歴史的建造物です。その起源は1886年、弘前教会内に本多庸一によって開設された来徳女学校(後の弘前女学校)にさかのぼります。当時の日本の女子教育とキリスト教伝道の発展に貢献するため、アメリカのメソジスト派婦人伝道会社から女性宣教師が派遣されてきました。1906年、こうした宣教師たちの宿舎として「外人宣教師館」が建てられました。設計施工は地元弘前のクリスチャン棟梁である桜庭駒五郎によるものとされています。
この建物は下見板張ペンキ塗り、アーリーアメリカン風の二階建てで、1階に食堂・集会室・書斎、2階に寝室という造りになっています。当初は弘前学院(旧弘前女学校)の市街地中心部に位置していましたが、1978年に現在の稔町キャンパス内へ校舎移転とともに移築復元されました。戦前は外国人宣教師の宿舎や集会の場として、また日本人教師と外国人教師の交流の場として役割を果たしていました。太平洋戦争という苦難の時期も乗り越え、戦後も学校教育と地域の国際理解、文化的交流に寄与し続けました。
東北地方における洋館建築として、その建築的価値は高く、明治時代の外人宣教師館の様式を今に伝える貴重な洋館として国の重要文化財に指定されています。現在は資料館として一般公開され、地域の教育史や異文化理解のシンボルとなっています。長きにわたり教育と国際交流の基盤を支え続けてきた本館、そしてその運営・保存に尽力されたすべての方々に心より敬意が表されます。
(2025年8月執筆)
PHOTO:PIXTA