近鉄郡山駅 移転/建替
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大和郡山市の玄関口として、1世紀以上の長きにわたり地域住民や観光客に親しまれてきた近鉄郡山駅。その駅舎は、単なる交通の結節点としてだけでなく、まちの歴史そのものを静かに物語る貴重な存在です。この駅の歴史は1921年、大阪電気軌道の駅として開業しましたが、現在の場所に本格的な駅として誕生したのは翌1922年のことです 。木造平屋建ての駅舎は、その優美な姿で大正時代の面影を今に伝えていますが、現在の駅舎の正確な建築時期は不明とされています。
郡山城跡のすぐ東に位置する立地は、まさしく城下町の玄関口としての役割を担い、通勤・通学客の往来はもちろんのこと、「金魚と城のまち」を訪れる多くの人々を迎え入れてきました 。車窓から望む城の石垣や堀は、この駅ならではの歴史的景観を形成しています 。現在、駅周辺では「近鉄郡山駅周辺整備事業」が進められており、それに伴って駅も高架化されるのではなく、約150m北へ移設され、新たに橋上駅舎が建設されることが計画されています 。多くの人々の記憶が刻まれたこの駅舎も、やがてその役目を終える時が近づいています。
日々の安全な運行とともに、貴重な歴史的建造物である駅舎を今日まで維持されてきた関係者の皆様には、深く敬意が表されます。大正から令和へと、4つの時代を見つめてきた駅舎の姿を記憶に留めるため、ぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょうか。
(2025年10月執筆)
PHOTO:PIXTA