桜島フェリー 24時間運航終了
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鹿児島市が運営する桜島フェリーは、1934年の船舶事業開始以来、桜島と本土を結ぶ重要な生活航路として、地域に深く根差してきました。その歴史の中で、最も象徴的な役割を果たしたのが、1984年に導入された24時間運航体制です。この体制は、41年間にわたり、火山島に住む住民の安心・安全、特に深夜の救急搬送を含む医療アクセスを途切れることなく保障し続け、公営交通インフラとしての高い歴史的価値と信頼性を確立しました。
しかし、21世紀に入ると、利用者数の減少と燃料費の高騰が経営を圧迫しました。2015年度以降、事業は9年連続の赤字となり、累積赤字は約27.6億円に達する深刻な事態に至りました。特に深夜帯の利用率は極めて低く、午前0時から3時台の平均利用は旅客4.9人、車両5.2台という非効率な状況が明らかになりました。
この構造的な赤字を是正し、生活航路全体の継続を確実にするため、24時間運航体制は歴史的な見直しを迎えます。2025年10月1日午前0時をもって、0時から3時台の定期運航便が停止され、運航体制が変更されました。ただし、救急車などの緊急車両については、要請があれば約30分で出航できる待機体制が引き続き確保されます。
長きにわたり、市民の生活と安心を支えるために尽力された運営陣の多大な努力に、心からの敬意が表されます。深夜の錦江湾を渡り、人々の営みを支えてきた航路で過ごした利用者の皆様の思い出は、地域史に深く刻まれています。
(2025年10月執筆)