【熊本市動植物園】モノレール 廃止
- 乗り物
熊本市東区の熊本市動植物園で、46年間にわたり市民に愛されてきた遊戯施設モノレールが、その歴史に幕を下ろします。
1979年に運行を開始したこのモノレールは、地上約6メートルの高さから園内を巡る「空の散歩道」として、たちまち人気の乗り物となりました 。普段は見上げることしかできない動物たちを眼下に見下ろすユニークな体験は、年間約10万人もの人々を魅了しました 。子どもたちの歓声を乗せて走り続けた車両は、いつしか親子三代にわたって共有される思い出の象徴となり、地域の心象風景の一部として深く根付いていました。
しかし、長年の運行は施設の老朽化という避けられない課題をもたらしました。設置から45年以上が経過し、交換部品の調達も年々困難になっていました 。さらに2023年には車両の衝突事故が発生し、安全性の確保が大きな懸念材料として浮上しました 。これらに加え、2029年の開園100周年に向けた記念事業「サバンナエリア」の整備予定地に軌道があること、そして運行に伴う音や振動が動物に与えるストレスをなくすという「アニマルウェルフェア(動物福祉)」の観点も、運行終了の決断を後押しする複合的な要因となりました 。
その最終運行日となる2025年9月30日には、午前11時半から「ラストランセレモニー」が開催され、最後の花道を飾ります 。現在、車両は感謝を込めたラストラン仕様の特別な飾りつけで運行しており、別れを惜しむ多くのファンが最後の乗車に訪れています 。 長きにわたり、数え切れないほどの笑顔と夢を運び続けた運営主の皆様に、心からの敬意を表します。レールは姿を消しても、モノレールと共に過ごした温かい記憶は、これからも多くの人々の心の中で輝き続けることでしょう。
(2025年9月執筆)
PHOTO:写真AC