秩父市立川俣小学校 閉校
- 文化・教育施設
埼玉県の秩父の山深くに、今は静かに時を刻む「旧秩父市立川俣小学校」があります。この学び舎は1898年、浦山の谷間に点在する集落の子供たちのために、地域の未来への希望を一身に背負って開校しました。林業や養蚕で生計を立てる人々にとって、学校は教育の場であると同時に、共同体の心を一つにする大切な場所でした。
戦後、地域の人口が最も多かった時代には、運動会などの学校行事が谷全体の一大イベントとなり、集落の垣根を越えた交流を生み出しました。異なる集落に住む子供たちが共に学び、遊ぶことで、「浦山の子」としての一体感を育んだこの場所は、まさに地域の心臓部と言える存在でした。この学び舎で育まれた絆と友情は、卒業生たちの心に今も温かい思い出として残っていることでしょう。
しかし、1970年代から始まった林業の衰退と、首都圏の水がめとなる浦山ダムの建設計画が、学校の運命を大きく変えました。ダム建設によって多くの集落が湖底に沈み、児童数は減少の一途をたどります。そして1992年、地域の人々に惜しまれながら、94年にわたるその歴史に静かに幕を下ろしました。
閉校から時が流れた今も、校舎は谷の歴史を見下ろすように佇んでいます。子供たちの声は消えても、約一世紀にわたり、この谷間で子供たちを育み、地域を繋いだその大切な役割への敬意が薄れることはありません。この学び舎が語る物語は、これからも人々の記憶の中で生き続けていきます。
(2025年9月改筆)
懐かしい記憶が呼び起こされる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
卒業生・先生・地域住民など関係者様の心の中に、美しい思い出が永遠に記憶されますように。
PHOTO: 廃校5000 様