三成ダム
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日本初のアーチ式ダムの誕生と「白い石炭」への希望
島根県奥出雲町の斐伊川上流域に建設された三成ダムは、日本で最初となる本格的なアーチ式コンクリートダムです。古来より真砂土を用いた砂鉄採取「かんな流し」が盛んな地域でしたが、これによる大量の土砂流出は川床を押し上げ、度重なる激しい水害を引き起こしてきました。この脅威から地域を守るため、昭和24年(1949年)に砂防ダムとして計画が始動します。さらに、戦後の深刻な石炭不足を背景に水力発電の役割も追加され、「白い石炭 島根の宝」という熱い期待を背負いながら、昭和29年(1954年)3月に誇り高き完成を迎えました。
歴史を今に伝える意匠と地域を魅了する美しい景観
山深い渓谷に佇む三成ダムの堤体は、当時の木製型枠の跡や苔が静かな情緒を醸し出しており、新旧の技術が調和した幾何学美を今に伝えています。かつては11月の紅葉の時期になると、近隣を走るJR木次線のトロッコ列車から元職員による情感豊かな解説が行われ、乗客を深く魅了していました。また、平成27年(2015年)11月に開催された土木遺産認定の記念式典では、限定の特製ダムカードが配布され、全国から集まった愛好家や地元住民の温かい笑顔と活気で大いに賑わいました。
設備の更新と土木遺産10周年を迎える現在の歩み
日本におけるアーチダム技術の原点として高く評価された三成ダムは、平成27年(2015年)9月に土木学会選奨土木遺産に認定されました。下流の三成発電所は、設備の老朽化に伴い平成28年(2016年)10月に運転を一時停止して建て替え工事が行われるなど、時代に応じた変化を遂げています。さらに、土木遺産認定から10周年の節目を祝し、令和7年(2025年)には奥出雲町のモミジをあしらった特製マンホール蓋が製作されました。この記念碑は同年5月以降にダムの駐車場へ設置され、訪れる人々にその歴史を伝えています。
伝統の灯を未来へつなぐ恩恵と敬意
戦後の復興期から現在に至るまで、地域の安全と産業を足元から支え続けてきた三成ダムと関係者の情熱に対し、深い敬意を表します。神話が息づく奥出雲の美しい大自然と調和しながら、先人たちが築き上げた確かな技術の結晶が、これから先も地域の誇りとして永く愛され、未来の世代へと健やかに受け継がれていくことが心より願われます。
(2026年6月執筆)







