日比谷公園 川原売店
- 商業施設
日比谷公園の木漏れ日の中に佇み、多くの人々の憩いの場となってきた「川原売店」が、公園の再整備計画に伴い、2025年10月29日をもってその長い歴史に幕を下ろします。
この売店の歴史は、戦後の公園の近代化と深く結びついています。1903年の開園当初、公園には松本楼のような本格的な洋風レストランが設けられましたが、川原売店のような気軽に立ち寄れる売店が登場したのは、戦後の復興期です。現存する建物は、1964年の東京オリンピック開催に合わせてリニューアルされたもので、首都の玄関口として公園全体が整備された際、園内に6店舗設けられた売店の一つでした。
以来、半世紀以上にわたり、川原売店は昭和の面影を今に伝える貴重な存在として営業を続けてきました。オリンピック当時に作られた売店の中で現存するのは、今や数えるほどです。噴水の前で遊ぶ子供たち、音楽堂の音色に耳を傾ける人々、そしてオフィス街の喧騒から離れて一息つく人々の傍らには、いつもこの売店の姿がありました。特別なレストランとは違う、日常に溶け込んだ公園の風景そのものでした。
今回の閉店は、2033年の開園130周年に向けた公園の再整備事業の一環で、工事車両の動線確保などのために決定されました。長きにわたり、公園を訪れる人々の喉を潤し、心安らぐひとときを提供してくださった運営者の皆様に、心からの敬意と感謝を申し上げます。
昭和、平成、令和と三つの時代を駆け抜けた小さな売店の姿は、もうすぐ消失します。あなたの思い出の中にも、きっと川原売店とのワンシーンがあるはずです。ぜひ最後に足を運び、その記憶を心に刻んでみてはいかがでしょうか。
(2025年10月執筆)
多くの人々に思い出を与えてくれた川原売店。その営みを決して忘れたくないものです。
PHOTO:PIXTA


 
      
     
        
        
       
                  
               
               
               
               
               
               
               
               
               
               
               
               
               
               
               
               
               
               
               
              




