小田急ロマンスカーLSE 定期運行終了
- 乗り物
「ロマンスカー」の愛称で親しまれている小田急電鉄の特急電車。現在5種類運行している中で、その最古参となる“LSE(Luxury Super Express)”が2018年7月10日でついに定期運行を終了します。そこで今回は、長きにわたって走り続けたこのロマンスカーにスポットをあて、その魅力に迫っていきます。
LSEの概要
小田急ロマンスカーLSEはオレンジとグレーのカラーリングで1980年に登場し、1984年までに4編成が出そろいました。形式名は“7000形”です。斬新なデザインで登場した初代ロマンスカー3000形SE(Super Express)、小田急で初めて展望車を設けた2代目ロマンスカーNSE(New Super Express)に続いて3代目のロマンスカーにあたります。先代のNSEより先頭がシャープな形状になったことで、よりスピード感を感じる外観になっています。1981年に鉄道友の会第24回ブルーリボン賞を受賞しています。新宿から箱根湯本間の「はこね」を中心に、小田急線内の特急運用を数多くこなしてきました。
連接構造とは
初代ロマンスカーSEの頃から小田急ロマンスカーには「連接台車」が採用されており、LSEにも採用されています。普通の通勤車両は基本的に、2つの台車で電車1両を支えていますが、ロマンスカーなど連接車では車両の継ぎ目を台車で支えています。これにより1両の長さが短くなり、保守の手間がかかりますが、代わりに乗り心地が良くなり、急カーブにも強くなる利点があります。LSEは連接車両で11両編成を組んでいました。
普通の台車と連接台車の違いは見た目だけでなく線路の継ぎ目を通過する音にも表れています。通勤車両では「タタンタタン」と聞こえるところ、連接台車では「タタン、タタン」という違ったリズムで音が聞こえるのです。なお現行のロマンスカーでは50000形VSE(Vault Super Express)のみが連接台車となっており、その他のロマンスカーは一般の車両と同じ台車構造となっています。
後輩よりも長く生きた
3代目であるLSEの次のロマンスカーとしては10000形HiSE(High Super Express)が1987年に登場しました。名前の通り、中間車がハイデッカーとなり、展望席でなくても箱根へ向かう車窓を楽しめるようになったのです。また、HiSEはLSEと比較して先頭車がさらに鋭い流線形になり、よりスマートな雰囲気になっていました。
このHiSEがLSEの直近の後輩にあたるため、LSEは2005年にVSEが登場した際に置き換えの対象になるはずでした。しかし先輩であるLSEよりも後輩であるHiSEの方が先に引退を迎えてしまったのです。
これには2006年に施行された「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー法)」が大きくかかわっています。車両を含めた施設の新設や大規模改造時には国土交通省の基準を満たさなければならないのですが、HiSEはハイデッカー構造がバリアフリーに対応できず、結果LSEより早く引退することになったのです。ちなみにHiSEの一部編成は現在、長野電鉄に譲渡されて活躍しています。
GSE第2編成就役と共に役目を終える
このような背景から、37年間という長きにわたって新宿~小田原、箱根湯本間や藤沢方面などの特急として活躍を続けてきたLSEですが、2018年7月10日をもって定期運行を終了することが小田急電鉄より発表されました。LSE引退の翌日、7月11日より新型ロマンスカー70000形GSE(Graceful Super Express)の第2編成が運行を開始するため、これで置き換えが完了するということになります。GSE第1編成は同年3月に登場し、そこから第2編成登場までの短い間、5種類のロマンスカーを見ることができていましたが、今回の置き換えでそれも終了となります。この期間はまさしく、LSEからGSEへのバトンタッチのようにも思えます。
いかがでしたか?定期運行を終えたLSEはしばらくの間臨時列車として使用されるようですが、それでも2018年中に完全引退することが決まっています。皆さんの記憶に在りし日のLSEの雄姿を留めつつ、臨時列車としての最後の活躍を一目見に行ってみてはいかがでしょうか。
(2018年6月執筆)
PHOTO:PIXTA