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鍋島灯台

  • 建物・施設

荒波を照らす黎明の光と四国最古の誇り

かつて西洋の航海士たちに「暗黒の海」と恐れられた備讃瀬戸の海に、明治5年(1872)11月15日、一筋の希望の光が灯りました。それが香川県坂出市沖の無人島に誕生した、四国最古の洋式灯台である鍋島灯台です。イギリス人技師リチャード・ヘンリー・ブラントンの設計によるこの白い塔は、夜の航路の険しさを考慮し、夜明けを待つ船のための「停泊信号」という、世界でも珍しい役割を担って産声を上げました。隣島から切り出された頑丈な花崗岩を積み上げた石造りの壁は、150年以上の月日が流れた今も、潮風に耐えながら瀬戸内の安全を静かに見守り続けています。明治新政府の気象観測網としての側面も持ち、自然と向き合う最前線の地として、日本の近代化を支え続けました。


孤島に刻まれた家族の絆と暮らしの跡

灯台の傍らには、明治6年(1873)から昭和30年(1955)頃まで、灯台守とその家族が共に暮らした「退息所」が佇んでいました。石造りの洋風建築に瓦葺き屋根を載せた和洋折衷の住まいは、波の音を子守歌に過ごした人々の温かな息遣いを今に伝えています。現在は高松市の「四国村」に移築保存されていますが、孤島での生活を支えた石造りの物置の冷たい感触などは、当時の厳しい環境下で寄り添い合った家族の記憶を象徴する遺産として大切に守られています。


陸続きとなった聖域と重要文化財への昇格

かつては海に浮かぶ孤島だった鍋島ですが、現在は堤防によって隣の与島と陸続きになり、瀬戸大橋を渡る列車の車窓からもその愛らしい姿を望むことができます。令和4年(2022)12月12日には、その歴史的価値が認められ国の重要文化財に指定されました。令和5年(2023)3月11日には指定書の交付式が行われ、令和3年(2021)7月1日からは敷地の一般公開も不定期に実施されるなど、地域の新たな観光資源として未来へ向けた保存活用計画が進められています。


未来へ繋ぐ赤と緑の輝きと先人への敬意

赤と緑の光を交互に放つ「不動赤緑互光」という非常に珍しい瞬きは、今も11海里の先まで届き、行き交う船の安全を支えています。150年にわたり風雪に耐え、レンズを磨き続けた先人たちの献身的な努力には、深い敬意を表さずにはいられません。多島美が広がる瀬戸内海の風景に溶け込むこの白い守り神が、これからも航路を照らす慈しみの光として、私たちの記憶と共に永く語り継がれていくことを願ってやみません。

(2026年2月執筆)

長きに渡り当地を代表する景色の一部となっております。

PHOTO:PIXTA

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