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上藻別駅逓所

  • 建物・施設

北海道の開拓期、旅人の宿泊から物資の輸送、郵便の取り扱いまでを一手に担った独自のインフラ「駅逓所(えきていしょ)」をご存知でしょうか。紋別市の山間に佇む上藻別駅逓所は、1926年に官設の施設として建設されました。

特筆すべきは、かつて「東洋一」と謳われた鴻之舞鉱山と紋別市街を結ぶ要衝であった点です。ゴールドラッシュに沸く地域社会において、ここは単なる通過点ではありませんでした。金山を目指す労働者や公務で訪れる人々にとって、厳しい自然の中で暖を取り、囲炉裏を囲んで情報を交換し合う、かけがえのない「社交の場」としての役割を果たしていたのです。1940年に駅逓としての業務を終えた後も、1949年までは旅館として営業され、地域の生活と物流を支え続けました。

その後、建物は老朽化し消滅の危機に瀕しましたが、かつての鉱山関係者や有志たちの「地域の記憶を後世に残したい」という熱意により修復され、2005年に資料館として再生しました。2008年には国の登録有形文化財にも指定されています。館内に展示された金鉱石や使い込まれた生活道具は、当時の喧騒と人々の息遣いを静かに語りかけてきます。

風雪に耐え、歴史の灯火を守り続ける保存会の皆様の尽力に、心からの敬意を表します。かつて鴻之舞で過ごされた方、あるいはこの道を旅した記憶をお持ちの方は、ぜひ訪れてみてください。懐かしいあの日の情景が、鮮やかに蘇ってくるはずです。

(2025年12月執筆)

PHOTO:写真AC

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